建築科には伝統建築演習という授業があり、今年から京都府教育委員会文化財保護課を退職されたばかりの福田先生に担当してもらっております。この日は一日、奈良西ノ京に唐招提寺、薬師寺を訪ねます。薬師寺東塔の工事現場を見学できるとあって、私も参加しました。久しぶりの唐招提寺です。
上の写真は唐招提寺の南大門および金堂での説明風景です。建築史や演習で学んでいる古建築の細部意匠などを目の当たりにできます。
改修工事が終わって落ち着いた金堂です。やはり屋根が美しいです。軒下に見えている2段の組み物とその下の柱と奥に見えている幕、基壇などが成している立面の構成は本当に素晴らしい。柱間が側に行くほど狭められているのが、ここでは視覚的に効果を上げているとの説明。鴟尾は今回の工事でレプリカに替えられたそうです。
背後の大講堂の前にて。この建物は御所の建物を移築したもので、京都の東寺と同じですね。やや大振りの組み物と間斗束バランス、頭貫と内法貫の水平線が貫いた下に桟唐戸が堂々と並ぶ構成など、これはこれで金堂に負けてないな〜と感心します。こちら側から見る金堂の連子格子窓の並ぶ面もとてもいいですし、東に瀟酒な鼓楼を置いて金堂、大講堂が並行する堂々とした空間はとても緊張感があっていいものです。
午後から、奈良県の文化財保護課さんのお世話で薬師寺東塔の工事現場を見学しました。鉄骨の素晴らしい素屋根足場がすっぽり東塔を覆っています。基礎は地上に置かれたコンクリートの固まりで耐えているのだそうです。足場を登って行くと、東塔の各層が次々に見えてきました。間近に見られるいい機会です。
目の前でよくよく見ると、あちこちの傷みがわかります。垂木の先は大きな蜂の穴がいくつも空いていますし、重みに耐えかねて、いくつかの組み物で歪みが出ています。裳階の長押にその沈下の具合がはっきり現れています。主任さんのお話では、その他にも柱が空洞化していること、基壇が半分ほど地中に埋まっていることなど、今回の修理で対処せねばならない問題点があるそうです。
また、東塔は、後代の改修で裳階の連子格子窓が漆喰壁に変えられているところを、彩色も含めて西塔のような元の形に戻すかどうか、また第三重の屋根の勾配、軒の出など、いくつも考えねばならない点があること、そのほか年輪年代調査によって創建年代を確定するという楽しみもあるようです。
工事現場の見学の後、薬師寺の伽藍を見て回りました。これは金堂から北にある大講堂を望んでいるところです。大講堂には塔や金堂のような重層はなく、緩やかで壮大に伸びている屋根の軒の下にやはり立派な裳階が重ねられていて、独特のプロポーションを見せています。金堂といい、大講堂といい、塔といい、回廊といい、すべてが何か圧倒的な印象があります。法隆寺や唐招提寺の内に込めたほのぼのとした強さというのとは違って、やや外に押し出すところが勝ったところがあるな〜と感じるのは私だけでしょうか。
そんなことをぼんやり考えている内に、時間はずいぶん過ぎていて、福田先生はじめ生徒諸君の姿は見えず、残っていた生徒数人で玄奘三蔵院にも回って、京都に帰りました。夏日のような素晴らしい天気で、一日中歩きました。みなさん、おつかれさま。
(やっぱり奈良の建築は美しいな〜と納得しているサノでした)
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