今年度の建築科木工コースは3件の町家改修に挑んでいます。その紹介はまた別便でお知らせしましょう。ここでは、京都のまちにふさわしい新築町家を建てるのに必要な勉強として、杉材を用いた蟻落とし仕口を検討しようと、耐力実験を行っている様子を紹介します。
実験の様子 受ける梁に割れ破壊がおこる
実験は3体、1は練習用でつくった105mm角の腰掛蟻、グラフはyoko105-1 赤で示しています。
次に4寸*8寸の親梁に4寸*6寸のささらが蟻で仕込まれたものを2つ。
その1は先日、データ無しで破壊試験したものを再度、割れをビスで留めて実験をしてみました。 グラフはyoko180-1 緑 です。
もう一つのサンプルですが、タダ君が作成したものです。グラフは yoko180-2 水色です。
実験結果比較グラフ
赤のグラフ105mm角の試験体では、力の作用点がh=800でしたので、曲げ力としては、ここのkN*1.25でkNm という数値になります。グラフはそのままのデータなので、このまま強度の比較にはなりません。
60mm程度引っ張ったところで最大値0.57kNですから、1/13rad で 0.71kNm という曲げ荷重が記録されていると見て下さい。
その後は徐々に落ちていって、0.25kN、0.31kNm で推移するということになりますが、これはボルトで押さえられているので、それ以上割れが進行しなかったということと見られます。
次に、緑のグラフ、180mmの試験体の1ですが、力の作用点Hが900ですので、曲げ力は1.1倍することになります。押し引きしていますが、押し(+側)は前回の破壊によって、強度が出ません。引き側(ー側)で見て下さい。
ー側では、最大値は-72mm辺りのところで-0.57kNとありますが、力の係具合で0点が25mmほどずれているので、補正すると、-50mm程度のところで0.57*1.1=0.63kNm となります。最大値では、+側の方が大きくて、116mmのところ(補正後 90mmのところ 1/10rad で)0.79kN 0.88kNmということになります。
3つめに水色のグラフ、180mmの試験体の2ですが、設定をあやまり、引き側(ー側)で途中からワイヤーが緩んでしまい、データが取れていません。押し側(+側)で見て下さい。最初から剛性が高くて、きちんとできている印象があります。さすがタダ君ですね。
25mm(1/36rad)あたりからほぼ横ばい状態で、0.9kNほどを出しています。最大値は80~90mm(1/12~10)あたりで 0.99kN 1.1kNmぐらいです。引き側では、60~80mmあたりで1.08kN 1.2kNm を出しています。
1 蟻落しは水平横方向の曲げ荷重に弱そうだ
2 1/20~10rad でピークがあり、そこから母材に割れが入って耐力は落ちる
3 最大耐力は 蟻の長さで 2.5寸(75mm)で 0.75kNm 程度、 6寸( 180mm)で 1.1kNm 程度
蟻の大きさに比例していないようだ
4 梁間方向での揺れにおいて、壁がある両妻面に対して、大黒柱通りは受けている荷重の割に壁が少ない
ので、この通りの水平方向の振れ幅が大きくなる可能性がある。そのような場合に水平構面が平行四辺
形に変形することになる。通し柱を結ぶ主要な梁とささらが変形に抵抗するが、蟻落としささらの水平曲げ
に対する抵抗力の負担を検討する必要がある (上図参照)
今週はまっすぐ引き抜く実験をしてみます。お楽しみに。
(さのはるひと)
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