6月7日に行った研修棟の腕木の耐力実験をご覧いただいた方にそのつづきを。前回は成が120mmの腕木と枕、肘木を3段重ねていましたが、これを成を180mmに上げて2段にしたセットに設計変更し、再度耐力実験を行いました。この時に、ロードセル(荷重計)の係数を間違えて入力していたことが発覚、17%荷重を多めに拾っていたことになりました。前のものも訂正いたします。
上はおよそ15kNをかけたときの様子です。1m伸ばした荷重ポイントで鉛直方向に58mm沈んでいます。前の実験では13kNほどですでに折れていました。まだ大丈夫のようです。右は力貫にφ12mmの全ねじボルトでアンカーしているところですが、座金が木材にめり込んでいる様子が見えます。
19kNですごい音をたてて腕木が破断しました。前回は柱の中、込み栓のところからひび割れが生じていましたが、そこには込み栓による断面欠損もありますが、節の影響もあったと思われました。今回はその辺りに節が来ないようにしたこともあって、もっと奥の肘木と結んでいるけやき栓で折れています。
「先生、なしてここで折れてるんすか?」
「ここが一番断面が小さいところだからだろうね。」
「そっかあ。だば、木栓を通すのを止めて、角ダボにしたらどおっすか?」
「あり得るね。その方がつくるのも楽だよな〜。でも、けやきの栓は全体に力を受けていたよ。腕木と肘木を一体にして頑張ってくれていたということだ。角ダボにすれば最大耐力は上がるかもしれない代わりに、一体性は望めないので、それまでの剛性はそう高くならない。たわみも大きくなるだろうね。」
前回の実験との比較をグラフにしてみました。鉛直方向の変形量(横軸)と荷重(縦軸)、青が今回の2段仕様、赤が前回の3段仕様です。
*2段の方が剛性が高い。設計荷重5kN時、2段は13mm、3段は28mmの変形。
*最大耐力は2段が19kN、3段が13kNである。
*両方とも変形が90mm辺りで破断している
というようなことが読み取れるかと思います。
これらの数字で強度を計算してみましょう。
1mの片持ち梁に10kNの荷重がかかっている場合、根元の最大曲げモーメントは10kNm
これを単純に腕木だけの断面45*180mmで受けているとすると、そこにかかる曲げ応力は
10*1000N*1000mm*6/45*180*180mm3=41N/mm2
となります。この値はかなりよいひのきの規準強度並みですね。これでも大丈夫でした。
さらに、断面欠損のある箇所では、断面は15*180mm*2ですから、ここでは
10*1000N*1000mm*6/15*180*180*2mm3=62N/mm2
となります。それでも折れてません。折れたのは19kNでしたから、その時には118N/mm2
もの曲げ応力がはたらいていたことになります。これはいくら強いひのきでも無理な数字でしょう。
つまり、それだけ肘木が助けてくれていたと考えられます。もし肘木が一体の断面であれば、成が2倍になりますから、応力は1/4になり、118/4=30N/mm2くらいということになります。
これからみると、肘木はすべてではないにしても、曲げ応力を半分くらいにはしてくれているとみられるでしょう。梁成で言えば、1.4倍くらいにしてくれているわけです。
(さのはるひと)
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