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[学校内のあれこれをお伝えします!]
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 jikkenNo.11.jpg (試験体No.1の実験風景)

 今年の構造実験は一連の土壁の耐震性能を見るもので、とくに平成の京町家で用いている土壁を検証してみることになっている。

 まだ後期授業は始まっていないけれども、一足先に後期の授業である実験を行うことにした。土壁試験体をつくるのに時間がかかるからである。ここに載っているのは、実は修学旅行で土壁塗り体験を行った中学生たちがこしらえた土壁を仕上げたものである。

 今年は5チーム、5試験体を実験するが、これもその1で、まず手本に行う見本のようなものだ。 チームといっても、今回は岡君と石原さんが担当。手順を教えて、一人は油圧ジャッキを操作し、それに合わせてパソコン操作によってデータを記録していく。






jikkenNo.12.jpg

 このNo.1は通常の土で塗ったものだが、厚い貫が5段入った手強い壁である。土はスサが多く入った柔らかなものだけに、初期の耐力はさほどではないが、粘り強い耐力をもつ壁であることが予想される。

 水平に加力をおこなう実験では、桁の水平変移を規準に荷重を測定し、土壁の変形の具合を目測していく。変移は1/300rad(9.1mm)から繰り返して行くが、1/150rad(18.2mm)が壁倍率を見る特定変移角として、一つの規準となる。が、実際の変化としては、隅にいくらか隙間が開くくらいで、何と言うことはない。倍の1/60rad(45.5mm)ほどになると、あちこちにクラックが見えて来る。

 上の写真の右はずっと変形が進んで1/20rad(135mm)を超えたくらいの最終状態を撮影したもの。
縦の竹小舞が表になっていることから、こちら側では竹小舞の上に塗られた土層に斜めにクラックが入る、いわゆる剪断破壊の様子が見えている。裏側を覗き込むと、貫に沿ってクラックがおおきく入り、部分的に面外座屈の様子も見られる。

jikkenNo.1graph.jpg

 記録したデータをグラフに表示した。 押し引きがー、+となっている。+の側とーの側とで強度がずいぶん異なるのは、タイロッドの懸ける位置がちょっとずれていたことによるのかもしれない。 結果的には、特定変形角に対応する耐力から、壁倍率はかろうじて1.5ほどであるが、ばらつき係数を乗じると、もっと小さい値となる。やはり柔らかめの土を使っていること、塗り方がどうしても大雑把のために、貫回りやちり回りに隙間ができていることによるのだろう。一方、最大耐力は、1t を超えているのだから、立派なものだ。厚い貫が5段に組まれていることによるものと思われる。

                                    (さのはるひと)       


 
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2年生の授業に、伝統構法という授業があります。町家や民家などの伝統的な構法について学びます。この日はちょうど平成京町家の伝統型で初めて認定を取得した梓工務店さんの北区の工事現場が見学できるとあって、学生たちと行ってきました。


azusa07041.jpg


ほぼ平屋の建物で、概観はおとなしい感じですが、中に入ると、いつもの梓工務店のワールドです。全体が1室になっていて、頭上の梁組が表しとなって目に飛び込んできます。一渡り見てから、床に座って、伊藤社長の説明を伺いました。

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「材料や栓打ちに興味をもつ生徒さんがいるが、この家では梁にカナダ産の目の詰まったベイマツをつかっている。床下の大引はやはりカナダ産のベイヒバ。柱は京北のヒノキ、板は杉。ある程度硬い材でないと、込み栓で引くことは難しい。」

「いろいろな仕口や継手が目立つかもしれないけれども、こういったものは、最近の若い者は、ちゃんとつくる。伝承される。でも、伝統構法というのは、そういった仕口の寄せ集めではない。伝統構法の本質は木組みの構造を考えるところにある。地震で揺らされて開いてしまう骨組みではダメ。揺らされることで締まっていく構造を考えることだ。それを若い者に伝承してもらいたい。」

「桁に兜蟻でかかる梁は開く方向、折り置きで桁を載せている梁は締まる方向、これを効かすように仕口を考えてやる。この力をうまく太い柱に伝えて下の基礎石に伝わるようにしてやる。それがわかるようになるまで、けっこう時間もかかると思うけれども、それを目ざして欲しい。」

「断熱材としては、壁は土壁t90の外側、床と天井には杉t30の外側にそれぞれスタイロt50を張っている。土壁は断熱性能としてはそう高くないが、蓄熱性能がいい。この家もストーブ1台でいいだろう。」

住まい手さんはエアコンもTVもいらないという外国人夫婦だそうです。照明にしても、まるで野武士のような質実剛健の好みの方のようですね。梓工務店のみなさん、どうもありがとうございました。

                                (さの)






意匠演習(建築科1年)という授業で、主に室内の様子をパース(透視図)スケッチでさっと描く練習をします。透視図の描き方は図学的に説明してやるのが一般ですが、もっと直感的に簡単にでも正確に描ける方法を教え、練習します。覚えた頃合いに、ちょうど設計している木造住宅のインテリアを描いてもらいます。

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自分で設計した家の見所をパースに描くのは、なかなかいいものです。結構、イメージしていたものとは違う発見があって、わくわくすること請け合い。あまり複雑なのは難しいので、なるべくわかりやすく、ドラマチックな空間を拾い出すのがいいでしょう。このスケッチ法は、壁に対して正面から見ることで、消失点が1である描き方ですから、補助的な作図も不要で、コツを覚えれば、すぐに描けます。ひとつ、ある生徒君の案を選んで説明がてら、黒板に描いて見ました。

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このくらいラフでよければ、30分でおおよそ描けます。定規できちんと描いていると、3、4時間はかかるかな。でも、自分の設計している空間がどんなものか、ざっくり捉えるためには、こんな風にざっとフリーハンドスケッチで捕まえてみるのがいいでしょう。

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ちなみに、この生徒君がスケッチブックに描いている平面図はこんな感じのものです。前に紹介しましたが、山荘やログハウスでこの地域を特色付けようというグループの設計ですね。試しに描いたスケッチがあまりに違っていたので、描き方を説明する材料に借りました。初心の生徒君にはまだ図面からだけで立体的な空間をしっかりイメージすることはなかなかできません。でもこうして描いてみると、よくわかります。これをもとに、階段をこうしたいとか、窓が欲しいとか、照明をこの辺から飛ばしたいなどと次々にイメージが沸いて来るものです。

明後日の金曜日には各自のケント草案(着色)の発表会です。その際にこのパースが説明に添えられるといいでしょう? みんな頑張ってね。

                                     (さの)





                                




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 建築科1年ではこの頃、木造住宅の設計課題に入ります。6戸からなる敷地に、まち並みルールをグループごとに提案する日が来ました。各グループで発表の準備をしています。写真は6戸の裏側に共有グリーンスペースをつくって生かそうというチームです。共有スペースをどう生かすか、各家にどういう関わり方を持ち得るか、開くか閉じるか、意見が分かれてなかなかまとまらない様子です。結局、各家の関わり方はそれぞれにまかせるという自然体で行こうということでしばらく設計を進めようということに。

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 先ほどのグループとは逆に、ぐるり外側になるべくグリーンオープンスペースをとって、まち景観を豊かにしようというチームです。芝生やシンボルツリー、低い生垣などのルールを決めています。

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 和風のまち並みを目ざすグループ。いぶし瓦のまち並みをつくるのだと。屋根勾配を4寸、壁は極力自然素材、塀は生垣ないし板塀とするなど、自然な感じを生かすようです。メンバーの中には、朝鮮の伝統住まいを主とする韓国人生徒も。なかなか屋根伏図もしっかり描き込んでいて、いい感じです。


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 ヨーロッパ風まち並み協定グループ。レンガ風の壁に漆喰の白を基調とした洋風建物とし、それに似合う庭と樹を植えること。木造住宅でレンガはちょっと使い方を工夫しないといけませんね。


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 最後は山荘、ログハウス景観グループ。吹き抜けにまきストーブ、日本の樹を植えるなどで楽しそうな山荘風景をつくるのだとか。ログハウスと梁柱の2種類を混ぜている。これも楽しそうですね。


 全体を通じて、樹や自然にしたがった馴染みのよさそうな家並みがイメージされ、モダンデザインを張った個性的な設計の住宅は見られませんでした。ここまでの雰囲気では、今年はなかなかいいペースで設計を進めているようです。この調子で各自の住宅イメージをどんどん確実なものにして行って欲しいですね。次はラフなスタディ模型をつくってもらいながら、案を練って行きましょう。
                                      (さの)

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 建築科には伝統建築演習という授業があり、今年から京都府教育委員会文化財保護課を退職されたばかりの福田先生に担当してもらっております。この日は一日、奈良西ノ京に唐招提寺、薬師寺を訪ねます。薬師寺東塔の工事現場を見学できるとあって、私も参加しました。久しぶりの唐招提寺です。

 上の写真は唐招提寺の南大門および金堂での説明風景です。建築史や演習で学んでいる古建築の細部意匠などを目の当たりにできます。

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 改修工事が終わって落ち着いた金堂です。やはり屋根が美しいです。軒下に見えている2段の組み物とその下の柱と奥に見えている幕、基壇などが成している立面の構成は本当に素晴らしい。柱間が側に行くほど狭められているのが、ここでは視覚的に効果を上げているとの説明。鴟尾は今回の工事でレプリカに替えられたそうです。

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背後の大講堂の前にて。この建物は御所の建物を移築したもので、京都の東寺と同じですね。やや大振りの組み物と間斗束バランス、頭貫と内法貫の水平線が貫いた下に桟唐戸が堂々と並ぶ構成など、これはこれで金堂に負けてないな〜と感心します。こちら側から見る金堂の連子格子窓の並ぶ面もとてもいいですし、東に瀟酒な鼓楼を置いて金堂、大講堂が並行する堂々とした空間はとても緊張感があっていいものです。

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 午後から、奈良県の文化財保護課さんのお世話で薬師寺東塔の工事現場を見学しました。鉄骨の素晴らしい素屋根足場がすっぽり東塔を覆っています。基礎は地上に置かれたコンクリートの固まりで耐えているのだそうです。足場を登って行くと、東塔の各層が次々に見えてきました。間近に見られるいい機会です。

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 目の前でよくよく見ると、あちこちの傷みがわかります。垂木の先は大きな蜂の穴がいくつも空いていますし、重みに耐えかねて、いくつかの組み物で歪みが出ています。裳階の長押にその沈下の具合がはっきり現れています。主任さんのお話では、その他にも柱が空洞化していること、基壇が半分ほど地中に埋まっていることなど、今回の修理で対処せねばならない問題点があるそうです。

 また、東塔は、後代の改修で裳階の連子格子窓が漆喰壁に変えられているところを、彩色も含めて西塔のような元の形に戻すかどうか、また第三重の屋根の勾配、軒の出など、いくつも考えねばならない点があること、そのほか年輪年代調査によって創建年代を確定するという楽しみもあるようです。

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工事現場の見学の後、薬師寺の伽藍を見て回りました。これは金堂から北にある大講堂を望んでいるところです。大講堂には塔や金堂のような重層はなく、緩やかで壮大に伸びている屋根の軒の下にやはり立派な裳階が重ねられていて、独特のプロポーションを見せています。金堂といい、大講堂といい、塔といい、回廊といい、すべてが何か圧倒的な印象があります。法隆寺や唐招提寺の内に込めたほのぼのとした強さというのとは違って、やや外に押し出すところが勝ったところがあるな〜と感じるのは私だけでしょうか。

そんなことをぼんやり考えている内に、時間はずいぶん過ぎていて、福田先生はじめ生徒諸君の姿は見えず、残っていた生徒数人で玄奘三蔵院にも回って、京都に帰りました。夏日のような素晴らしい天気で、一日中歩きました。みなさん、おつかれさま。   
                   (やっぱり奈良の建築は美しいな〜と納得しているサノでした)





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